ふたつの指輪
「最初の頃は、ほんとに、死んでしまいたいって思ってた。

あたしも死ねば楽だって。

実際はね、とても自殺する勇気なんてなかっただろうけど。


だけどね……少しずつ、魁人の分も生きていこうって思うようになってた。


あたしが魁人のことを覚えていてあげないと、かわいそうでしょ。

魁人は人を惹きつける人だったけど、なかなか人と心を開いて深く関わろうとはしなかったから」


視線は、また窓の外の鳥に移る。






「あたしね……

あたしがいたからあの人が死んだんだって思いをどうしてもぬぐえないの」



胸をえぐるような声。
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