ふたつの指輪
「……何を言ってる。

瞳衣がいたから、あいつは幸せになれたろ。


言ってたろ、幸せだったって。

あいつはきっと、後悔してないよ」



それはきっと、ほんとだ。



瞳衣がいなかったら、あいつは未だに人を愛することも、幸せも知らないまま、夜の街を徘徊して人をだまし続けてただろう。


心に、恐ろしい闇を抱えながら、そこから逃れるすべもなく。



「……」


瞳衣は、頬にこぼれ落ちる涙をそっとぬぐった。



「……ありがとう。尊さん」
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