ふたつの指輪
あいつ。


まるで、死ぬのが嬉しいみたいだった。

不意に訪れた死が神の救いであるかのように、安らかに死んでいった。


あいつも、自己破壊の誘惑に勝てない一人だったんだ。



あれだけ破滅的だったのは、どうしてなんだろう。



身にまとった血の衣が、やけにあいつに似合ってたっけ。



あいつも多分、自分の”ワル”な自己イメージから抜け出せなかったんだろうな。

ああいった世界にすすんで身を置いて、”ワルはワルらしく死んでいく”といったような自己イメージを知らず知らずのうちに完結させてたんだ。


あいつの中にも、当然悪い部分もあったけど、きらきら輝くようないい部分もあったのに。




人間がみんな、そうであるように。
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