ふたつの指輪
「……勝手にしろ」

尊さんは肩をすくめると、あたしにマグカップを示して、キッチンを出ていく。





「どうぞ」


気合いを入れて淹れたコーヒーを、ソファの前の白くて丸いテーブルに置く。

ベッドに腰掛けた尊さんがずず……とすするのを見ながら、思わず肩に力が入った。


「……うまいな」


「はぁ……よかった……」

「何緊張してんだよ」


ニッと皮肉げな笑みを浮かべる。



こんな明るいところで見ると、この人、ほんとにびっくりするくらいかっこいい。

魁人くんみたいな、優しげな美少年じゃなくて、線の太い、大人の男の人。

どこか、暗い翳はあるけれど。



黒いまっすぐな髪、きりっとした眉、鋭い目。

ほんの少し伸ばされた髭も手伝って。



”男の色気”なんて言葉がピッタリ。
< 33 / 331 >

この作品をシェア

pagetop