ふたつの指輪
「……」


尊さんは1万円札から顔をあげた。

黒い目があたしをじっと見つめる。



「聞いちまったからには、放っとくわけにもいかねぇだろ」


そっけない口調で言うと。

人差し指で、部屋の床を指差した。



「おまえ、今晩はここで寝ろ」


「……え?」


「あんなこと聞いて、家に帰せるか」


「……」



え?


どういうこと?


突然のことに、あたしはあっけに取られて口をぽかんと開けたままだった。




「わかんねぇのか?


おまえ、虐待されてるんだぞ」

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