ふたつの指輪
「家族なんだから、みんなが家計を支えるのは当たり前じゃ……」

「そりゃそうだ。

でも、フーゾクになると話が別だろ」

「……」

「お母さん一人なら生活保護費で暮らせるだろ。

おまえは家出て自立しろ。

その方がいい」

「……」


「もう18なんだろ」

「……」


「せめて、母親といったん距離を置け」

「……でも、ママは」


タケルさんはちらっと壁の時計を見上げると、手を挙げてあたしの話をさえぎった。



「今日はもう遅いな。

話はまた明日だ。

……ちょうど土日もあるし、ゆっくり考えたらいい。


とりあえず、今晩はここにいろ」


「……ママが心配すると思う」


「あんたが持って帰ってくるお金を待ってるだけだろ」




……ひどい言い方。
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