ふたつの指輪
「タオルは脱衣場の棚にあるから好きに使え。

ドライヤーは洗面所の横にかけてあるから」


確かに、化粧も落としたいし。

というわけで、あたしはお言葉に甘えて、シャワーを借りた。




化粧を丹念に落として、借りたパジャマを着て、髪を乾かして出ると。

尊さんはまたクローゼットに頭を突っ込んでた。


「クソッ、ややこしい関わり合いはごめんなのに、なんであんなの連れて来ちまったんだ」


ぶつぶつ悪態を吐きながら、カバンに服を詰め込んでる。




やがて、カバンを持って立ち上がると、あたしと目が合った。

ふん、と顎を軽く上げて口をゆがめて笑う。



「化粧取ったらまるきりコドモだな、おまえ」



……悪かったね。


あたしは口をとがらせた。



わかってるもん、自分でも。



「でも、その方がいいな」


尊さんは、目をちょっとだけ細めてニッと笑うと、そのままソファの上のコートを手に取って、すたすたと玄関へ向かう。
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