ふたつの指輪
(その方がいいって……え?どこ行くの?)


あたしはあわててヒヨコみたいに追いかけた。



「あの……どこへ?」

「今晩はダチんちに泊まる」


驚いて玄関に立ちつくすあたしに、靴を履きながらフッと口の端だけで笑った。


「女と同じ部屋に泊まるわけにいかねぇだろ」


「……お友達のおうち、近いの?」

「近かねぇけど」

「明日お仕事でしょ?

金曜日だし。

お仕事にお友達のおうちから行くの?」

「……いったん朝に戻る」

「そんな、大変……」


必死で食い下がるあたしに、不意にニヤリと笑った。



「なんだ、俺にいてほしいのか?」



……違うってば。


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