ふたつの指輪
(どうしよう、全然寝られないよ……)



電気を落とした暗い部屋で。

あたしはなかなか寝付けなかった。




――尊さんはもう寝たのかな。



「あの……」


あたしは暗がりに向かって声を掛けた。


「何だ、まだ何かあんのか」



……やっぱり起きてた。




声を掛けたものの、別に用事があるわけじゃなかった。

思わず、バカなことを口走る。


「あたし……実は何かされるのかとか、ちょっぴり思っちゃった……」


暗闇から返ってきたのは、ふん、と鼻で笑う声。


「誰がおまえみたいなコドモ襲うか、バカ」

「あはは、そうだよね」

「……くだらんこと言ってねぇで、さっさと寝ろ」
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