ふたつの指輪
あたしの返事に、尊さんはニヤッと笑った。


「腹減ったら適当にメシ食っとけ。

食材はその辺にあるの使え。

料理くらいできんだろ。

ビールは飲むなよ。俺のだ」


……飲みませんて。




「何かあったら電話しろ」


電話の横のメモに何か書いて、あたしにさっと差し出す。

ケータイの番号だ。


「テレビでもゲームでも何でも好きにしてろ。

わかったか?

この部屋一歩も出るなよ!」


尊さんはドアをバタンと閉める瞬間まで怒鳴ってた。




(そんなに怒鳴らなくても……)



どうしてそんなにムキになるんだろ。


ぷりぷりむくれつつ。

一人になって、改めて部屋を見回す。
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