ふたつの指輪
(……困ったな。)


着替えがないよ。


あれだけ外出るなって言ってたし……

大体、鍵がないから、出られないよね。


しょうがないので、あたしは昨日と同じ服を着た。




(何しよっかな)


あたしは、ぐるりと部屋を見回した。



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7時すぎ。

ガチャっと鍵の回る音がして、突然ドアが開いた。


「あ、おかえりなさい」

「……」


眼鏡の奥の黒い目で探るような鋭い一瞥をくれると。

尊さんはふぅ、と息を漏らした。


「ちゃんと言いつけを守ったんだな。

バイト行ってねぇか気が気じゃなかった」


そう言って、突然、後ろ手にあたしの頭をくしゃっとなでた。



(わ……)
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