ふたつの指輪
あたしのことだ!


昨日、店に強引に連れて行った上司って、この人?



……もしかして、昨日のことが、尊さんの評判落としてるの?



何か考える前に、あたしは思わず声をあげてた。


「ちょっと待ってください!

それは違うんです!

尊さんは、あたしの……」



「待て。それ以上言うな」



鋭い低い声でさえぎられて。


あたしは勢いをそがれて思わず口をつぐんだ。



「ほら、山崎さん、あっち座りましょう」


酔っぱらった年配オヤジは、もう一人になだめられて、別の席へ向かって歩き出してた。



「……ちょっと、どうして止めるのよッ」
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