ふたつの指輪
「アホか、おまえ、自分で自分をおとしめるような真似はよせ」

「……え?」


「自分からあんなバイト行ってたって宣伝するバカがいるか。

せっかく未遂だったんだから、今後一切俺以外には口にするな」



……。


あたしは唇を噛んだ。



「でも、あのままじゃ、尊さんが誤解されたままじゃない。

だって、延長入れてくれたのは、あたしが次の客を取らないでいいように……」


「いいんだよ俺は」


尊さんは顔色一つ変えず、優雅に食べ続けながら、きっぱりと言った。


「でも……」

「俺はな、人の評判や噂なんかで心が揺れたりはしねぇんだよ」

「……」

「勝手に言わせとけ、言いたいヤツには。

人がどう思おうが、誰が何か言おうが、俺自身は何も変わらない。



――俺は強い」
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