ふたつの指輪
「……」


気おされて、あたしは思わず黙り込んだ。



……まぁ、いかにも強そうですけども。


悪者をやっつける、正義感にあふれたヒーロー。



「さっさと食え。

食ったら買い物行くぞ」

「……」



仏頂面の尊さんと焼き肉をつつきながら、ふとさっきの人の言葉を思い出した。



「ねぇ、尊さん」

「……?」


いつものように、片方の眉だけを少しあげる。




「あたしを……指名してくれたの?」


尊さんは、物憂げな黒い眼であたしをジロっと見た。


「……ああいうところは、とりあえず指名しなきゃいけねぇんだよ」
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