ふたつの指輪
「……ありがと」


尊さんの言葉を無視して、あたしはお礼を言った。

尊さんは、不意打ちを食らったような怪訝な顔してる。


「だって……尊さんが指名入れてくれなかったら、きっと……」

「……」

「ちゃんとお仕事、しなくちゃいけなかっただろうから」

「ああ。そのことか」


そっけなく言う。


「まぁ俺みたいな客は他にいねぇだろうからな」


肩を軽くすくめる。



「ねぇ、なんであたしを指名してくれたの?」

「……」


尊さんは返事をしない。



あたしも、こんなこと聞いてどうすんだろ。

とか思いつつ、ついつい追求したりして。



「ねぇ、なんで?」

「……さあな」

「教えてよ」

「……るせぇな。

何を言わせたい?」
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