ふたつの指輪
「そんなの、尊がついて行けばいいじゃない」

「……男がついて行ったら問題あんだよ」

「どうしてよ」

「……考えりゃわかんだろ。

男がついていったら、別の意図を疑われる。何かと問題あるだろ」

「……ていうか、荷造りくらい一人でできるでしょ?

小学生じゃあるまいし」


梨恵さんの口からぽんぽん言葉が飛び出すのを、あたしは黙って聞いてた。



「そりゃ荷造りは一人でできるだろ。……けどな」

「けど?」

「母親がこの子に家に戻るように働きかけるのを防ぐ必要がある」

「何?家出の手助けってわけ?」


あきれたような言い方。


「……あの、あたし、一人で行けますから」


あたしは、黙っていられなくてつい口を挟んだ。
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