ふたつの指輪
「さっき尊さんが言ってた、お店であたしを助けてくれたんです」


「そっか。

尊はおせっかい焼きだもんね。


でも、あの人いつも真剣なの。

まっすぐ過ぎて、暑苦しいでしょ」


どこか寂しげににっこり笑う。



(この人、尊さんのこと、きっと好きなんだ)


尊さんの、彼女さん?


パジャマの本来の持ち主は、この人かな?


(久し振りって言ってた)



――もしかして、尊さんの、元彼女?





ガチャ。


そぉっとドアを開けると、ボロッとした部屋が目の前に広がった。


キッチンと部屋、合わせて9畳くらい。

ひと部屋しかないから、あたしとママの間のプライバシーなんて、ないに等しかった。
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