ふたつの指輪
(ママ……)


手早く荷造りを終えて。

あたしは、昨日バイト先でもらった6800円を財布から出すと、布団にくるまって外界を遮断してるママの枕元にそっと置いた。


少ないけど、ないよりはマシ。



(そうだ)


その辺にあったチラシの裏に、ペンで走り書きをする。



『少ないけど、バイト代です。

しばらくお友達のところに泊まります。

ちゃんと連絡するからね    瞳衣』



梨恵さんが無言で見守る中、そっと立ち上がってドアに向かおうとすると。


突然、後ろから暗い声が掛けられた。



「瞳衣」



さっと振り返ると、布団から上体を起こして、ママがこっちをじっと見てた。


とがめるような目つきで。
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