ふたつの指輪
「昨夜はどこに泊まってたの?」


「あの、あたしの家です」


梨恵さんがとっさに口を挟んだ。


ママは梨恵さんの方は見向きもせず、ちらっと枕元の置き手紙に目を走らせた。


「昨日行ったんでしょ?面接」

「うん」

「バイトでもらったお金、これだけなの?」

「うん」

「今日は?」

「今日は………いっぱいで、入れなかった」


ママは失望したように、ため息をついた。


「全く、何もさせてもダメな子ね」


昔から、未だに言われ続けてる文句が繰り返される。


「その店でちょっとしか入れないなら、他の店に行くとか、何か方法あるでしょう?

ちょっとは頭を使いなさいよ」


(自分だって、仕事してないくせに……)


喉まで出かかった言葉を、何とか引っ込める。

ママを責めてもしかたない。
< 84 / 331 >

この作品をシェア

pagetop