ふたつの指輪
「……どこへ行くの?」

あたしの荷物の多さに、1日2日泊まるんじゃなさそうだっていうことくらい、ママにもわかったみたい。


「瞳衣がいない間にママが病気にでもなったらどうするの?」

「……ママ」

「ママを殺すつもり?ママなんて死んだ方がいいって思ってるんでしょ」

「ママ!どうしてそういうこと言うの?そんなこと思うわけ……」

「瞳衣が親不孝者だって言ってるのよ」

「ママ……」

「そんな子に育てた覚えはないわよ」

「……」

「どうせ私なんて、生きてる価値ないし、死んだ方がいいかもしれない」

「ママ……だれも、そんなこと言ってないよ」


あたしはすり切れた畳に目を落とした。



仕事がなくなってウツ気味になってから、ママはときどきこういう泣き言を言う。


自分に価値がない、みたいなことを、くどくどと。



……かと思うと、突然怒り出したり。

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