ふたつの指輪
あたしを育てるために人生すり減らして。


かわいそうなママ。


あたしがいなかったら、もっと自由に生きられたのに。



やっぱりあたしがそばにいてあげた方がいいかもしれない。

せめてもの恩返しに。

ママは苦労してきて、とても不幸だから。


こんな状態のママを、やっぱり放っておけないもの。


「すみません、ちょっと瞳衣ちゃんにやってもらいたい仕事があって」


あたしたちをじっと見ていた梨恵さんが、きびきびとした口調で割り込んだ。


「ちょっといろいろ教えなくちゃいけないこともあって……今晩はお借りします。

パソコンの研修合宿に参加してもらうんです」



ママは初めて梨恵さんに気付いたように、声のする方にぼんやりと目をやった。



「あなた、誰?」
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