ふたつの指輪
今さらながらふと気付く。


あたしもあんまり話してないけど、あたしも魁人くんのこと、実はあんまり知らないかも。



いつもあたしばっかりしゃべってる気がするし。

あたしのことを聞いたり、褒めちぎったりするだけで、自分のことは全然話してくれないから。


――まあ、男の人ってそんなものかもしれないけどね。


「ところでさ、梨恵さんって、尊さんの彼女さんなの?」


ついついこっちも反撃に出てしまった。


「……ああ」


眉を軽く上げると、黒い目でビールの缶を見つめたまま、尊さんはうわの空でうなずいた。




ああ、やっぱりそうだよね……

助手席に座ってるあたしを見たときのあの目つき。



……やっぱり、あたしここにはいない方が……



< 98 / 331 >

この作品をシェア

pagetop