ふたつの指輪
「――昔のな」



尊さんは、口元だけでシニカルな笑みを浮かべた。


――え?


(昔の?)



「2年くらい前に付き合ってた。けど、あいつ……」


「……あいつ?」



「俺に内緒でデリヘルやってやがった」



「デ、デリヘル?」


ポカンとするあたしに、尊さんは暗い声で続ける。


「知らねぇだろうな。

――おまえが昨日いた店でやるようなことをな、ホテルなんかに出張してやるんだよ」


「………」


「バレないって思ってたらしいけど、ああいうのって、ちょっとしたことでバレんだな」


「………」
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