a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
まずはドラムソロが有り、それから重みのあるベースが響く。そしてリードギターが速いパッセージを弾き、そのバックではセカンドギターがベースと共にリズムを刻んでいる。
これを聴いた瞬間、明衣は一人「いや無理でしょ」と呟いた。
そして次の瞬間、ボーカルが入る。
「………!」
繊細な歌声だが、周りの伴奏に引けを取らない力強さがあり、思わずメンバーは言葉を失い、聞き入ってしまう。
伸びが良く、音程も安定している。下手な歌手より断然上手い。
サビに入って高音が増えても、音程はブレずに確実に当たっている。ブレスで引きつる事もない。
「……これが……城ケ島さんの声………」
本郷は誰に言うでもなく、呟いていた。正直、あの引っ込み思案の彼女がボーカルを努めるといっていた時は、少し心配だったのだが、これを聴くかぎりでは安心だ。
それどころか、本当に優勝が狙えるかもしれない……。
いや、その前に、この彼女の凄さを全校生徒に見せ付けるチャンスでも有るはずだ。
ギターソロが入り、曲もクライマックスに差し掛かる。
本郷は、ただひたすら譜面を睨み付けていた。