a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
井野坂と吉成は、基の前に立った。
そして、井野坂はナイフを基に差出し、静かに口を開いた。
「お前、俺を殺そうとしてたんだってな。別に、俺はそれも構わないって思ってる。お前には、その権利がある」
基はナイフと井野坂を交互に見てから、首を横に振って目を擦った。
「要らない。俺にそんな権利は無いよ」
声は震えていたが、瞳は真っすぐだった。
決意の固さの表れだ。
楡は感心したようにふっと息を吐き出すと、基を見つめた。
「最初は…やっぱりアンタの事が憎かったし、居場所を突き止めて、人込みに紛れてナイフで刺し殺してやろうって思ってた。けど、それじゃ大嫌いなアンタ達と何も変わらないって、気付いたんだ」
基は照れ臭そうに楡をチラッと見てから、再び井野坂に向き直る。
「復讐は悲しみを広げるだけだ。俺が今アンタを殺したとして、悲しむ誰かが絶対居るはずだから。アンタは悪いけど、その人は悪くないわけだし…」
──残された人が一番辛いのは、自分がよく判ってるから…
「だから、殺さないよ」
基は、真っすぐだった。