a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
明衣は彼を見た瞬間に立ち止まり、父の持つ黒い笠が雨水を滴らせているのを横目に、言葉を失ってしまった。
鉛の空とお揃いのブルーグレーの瞳が、ちらりと明衣をとらえた。
麻衣の姿を確認したらしい父は、安心したように顔を緩めると、濡れた髪を掻き上げて、言った。
「あぁ、誰か手伝ってくれ。体を拭くタオルと、お風呂を沸かして」
「え? あ、あぁ…」
麻衣は戸惑っていたが、父の頼みならば仕方がない。
とりあえず明衣にタオルを取りに行かせ、自分は風呂を準備することにする。
「あの人だれ?」
「知らないよ…」
怪訝そうに呟く麻衣を、少年は感情のない表情で一瞥した。