a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
その時、壁に張りついてこちらを伺う小さな子供と目が合ってしまった。
その手にはバスタオルがあって、どうやら翔太に頼まれたものを持ってきてくれたらしい。
「あっ、明衣! ちょうだいちょうだーい!」
翔太が明るい声で言うと、明衣という少女は顔を輝かせてペタペタと裸足で駆けてきた。
翔太はその小さな手からバスタオルを受け取ると、明衣と同じ目線に屈んで言った。
「あのお兄ちゃんにも渡して上げて?」
「………ん」
明衣は頷くが、不安そうに大きな瞳を揺らした。
背の高い沚に少しだけ恐怖しているようだ。
沚は翔太に倣って屈み込むと、明衣の瞳を覗き込んだ。
「……それ、貸してくれる?」
「…………っ…」
明衣は顔を真っ赤にしながらバスタオルを投げ付けるように渡すと、物凄い速さでリビングに続くドアに走っていき、ドアの手前で振り向いた。
そして、真っ赤な顔のまま言った。
「しょうがないから、明衣のシャンプーかしたげるっ」
「……………」
沚がポカンとしてドアを見ていると、不意に翔太が呟いた。
「………ウチの明衣はやらんぞ」
「…………」
沚は無言のまま頭を乱暴に拭いた。