a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
美帆子は、楽器の練習をする明衣や五月女、本郷の隣で携帯電話を操作する楡に視線を寄越した。しばらく液晶を見つめていた楡だったが、彼女のそんな態度に気付いたのか、無言で顔を上げた。
「…何かあった?」
「え、あ…その……」
美帆子は顔を真っ赤にしながら、口籠もって目を泳がせた。不思議そうに首を傾げる楡に、美帆子は「何でもないですっ」と早口で告げた。
楡は彼女の態度を気にした様子もなく、「そう」と気の無い返事をして、席を立つ。
「楡、どこ行くの?」
教室を出る楡に、明衣が怪訝そうに尋ねる。練習をサボるつもりなのかと責めるような目をしていた。
楡は頭を掻きながら、振り向かずに答える。
「職員室。吹奏楽部にお願いに行かなきゃなんないでしょ」
今までの依頼と規模が違う。
そう小さく呟いて、楡は怠慢な動作で教室を出ていく。
「ドラム練習してくださいねー!」
本郷の声が、その背中を追い掛けた。