a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
「愛海さん、今ライブ始まったよ」
「あっ、本当ですね。音が聞こえる…」
看護師に車椅子を押してもらいながら、愛海も会場に来ていた。ぼやぼやと霞む視界の中に、たくさんの人が居ることを確認する。
残念ながら、美帆子の活躍をこの目で見ることは出来ないが、耳で音を聞くことは出来る。
「しっかし、凄いねぇ愛海さんのお友達は。こんなことまでしちゃうんだ」
「私もびっくりです。まさかこんなお祭りみたいなの開催しちゃうなんて……」
aucって、実は凄い部活なんじゃないかな……?
愛海は苦笑してしまう。もし目が治ったら、一番先に挨拶したい。勿論、美帆子にも。
『次はみなさんお待ちかね!私のデビューのきっかけになった心音を、吹奏楽部の皆さんの演奏に合わせてお送りするね』
吹奏楽部という単語に、愛海はぴくりと反応した。
「看護師さん、出来るだけ前に行けないですか?」
「?」
不思議そうに見返す看護師に、愛海は微笑んだ。
「出来るだけ近くで、美帆子を見たいんです。あんまり見えないけど、でも…存在を感じたいの」
「愛海さん…」
そんな愛海の姿が儚く、けれどりりしく見えた。看護師は頷いて、車椅子を押した。