a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
ピアノの切ないメロディーが、まるでスライドショーか何かのように、本郷との思い出を蘇らせて、五月女は唇を噛んだ。
彼女の笑顔に一目惚れして、早いもので2年近くが過ぎようとしている。
右も左もわからない、新入生だった五月女に優しい笑顔を向けてくれた本郷。
間抜けにも校内で迷子になってしまった時には、迷うことなく手を差し伸べてくれて、一緒に歩いてくれた。
aucに入って、逃げ腰で頼りない自分に、呆れもしないで部員で居ることを許してくれたし、調べ物が得意だとわかると、仕事を任せてくれたりもした。
何よりも、依頼人のために、部員たちのために、他人のために一生懸命になる彼女が眩しかったし、憧れたし、同時に、守りたいと思った。
好きだ、一目惚れしちゃったんだ、と自覚するのに時間は掛からなかった。
それでも、今まで自分の気持ちを伝えることはできていない。
呆れてしまうが、あと一歩の勇気が踏み出せないのだ。桃子の応援ソングを何度も聞きながら、今日こそは、と毎日意気込んで、結局何もできずに一日が終わってしまう。
その日々の繰り返し。
しかし、今日はそうはいかないのだ。
今までくすぶってきた思いに火を点けて、彼女に伝えるチャンスは今日しか無い。
今日はいつもと違うんだ。
五月女は無意識に、膝の上で固く拳を作っていた。