a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜


「この辺りに住んでるって…」


五月女の殆ど呟きに近い問いに、楡は小さく頷きながら、相変わらずリスニングテストで問題を読み上げるアナウンスのような口調で答えた。


「あの新聞は小関書店が自主的に配布している新聞で、この辺りでしか配られていない。

段ボールの底に新聞を敷くなら、朝刊や夕刊一日分有れば事足りる。

それを、わざわざ薄い地域新聞を何日も蓄めていた。

それはつまり、朝刊や夕刊を取ってないって事だ」

「新聞を取る金が無いって事?」


話を割るように明衣が尋ねた。

すると、五月女が不意に立ち上がった。


「俺、この辺に住んでて、新聞取ってない家を探してみます!」

「はぁΣΣ!!?…どうやって……」


明衣が驚いたように言えば、五月女はデスクに腰掛け、パソコンを起動させる。


「ちょっと無視!!?」

「無駄よ」


苛立つ明衣に本郷が制止を掛けた。

「何で………」

「ああなった良祐は誰にも止められない」

「……え?」


五月女の指はパソコンのキーボードを、まるでダンスでもするかのように機械的に滑っている。






「自分の調べたいことが洗い出せるまで、あの場から動かないし、周りの音も聞こえてないの」






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