Magic Academy ~禁書に愛された少女~
『助けてやろうか』

「ほんとに?どうやって!」

藁にもすがる思いとはまさにこのことか、と思いながらも、本の言葉に耳を貸す。

『本を持って立つんだ』

言われたとおり、本を手に取り、立ち上がる。すると、パシン!という音が聞こえた。

『やっぱりな。次に外をイメージしろ』

「外?外ってどこよ」

『どこでもいい、ここにいて見つかるとまずいんだろ?なら、ここ以外のどこかを思い浮かべろ』

本に言われて、ぎゅっと目を瞑り、支給室を思い浮かべた。
次の瞬間、目を開けると、支給室の目の前に立っている自分がいた。

「やた!すごい、助かったよー!」

本をぎゅっと抱きしめる。すると、本がバタバタと表紙を広げて暴れた。

『な、なにすんだ。苦しいだろ』

「いやいや、君のおかげで助かったよー」


支給室で、不足していたアイテム作製の教科書を受け取り、寮へととぼとぼと歩いて戻る。

「ね、ところでさ、君って何者なの?」

そらが問いかけると、本は黙ったままだった。

「じゃ、名前。名前はないの?」

何度か声をかけてみたが、一向に喋る気配が無かった。寮に到着し、自分の部屋に戻り、本をベッドの上に置いた。

『お前はバカか?』

本から声がした。
が。

「今、バカって言った!?」

本に詰め寄ると、本からあきれ口調で返事が返ってきた。

『本に向かって喋りかけるとか、普通ありえねーだろ。しかも、こういう部屋の中でじゃなくって、おおっぴらに、外で!』
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