Magic Academy ~禁書に愛された少女~
会場にまだ残っていたのは、そらをふくめて3人だけ。1人は、真っ赤なロングヘアに、褐色の肌をした女生徒。もう1人は、めがねをかけた、金髪の長身の男子生徒だった。


よかった、一人じゃなかった!


少しだけ安堵すると、そらは席を立ち、歩いて会場を出て行った。

階段を上っていると、さっき残っていた女生徒が、後ろから声をかけてきた。

「ねぇ、何でテレポ使わなかったの?」

くりっとした大きな瞳。可愛い顔が、覗き込むように近づいてきたので、そらは思わず顔を赤らめた。

「え?何でって…使えないから」

そらの言葉に、女生徒は目が点になる。まずったかな、と、そらは苦笑いを浮かべながら頭をかくと、女生徒は笑いながら背中をばしばしと叩いてきた。

「なにそれ、そんな理由だったんだ!おっもしろー!」

笑われるのには慣れている。そらは苦笑いを浮かべたままだった。

「私はアッシュ。あなたは?」

アッシュに聞かれて、そらは慌てて答えた。

「あ、私はそら。よろしくね」

手を出すと、アッシュはにっこりと笑って握手をした。

「そらは何組?」

「私?私はEだけど」

「残念ー。私はAなんだよねー」

残念そうな顔をするアッシュ。少し話をしなが、一緒にクラスへと向かっていたのだが、2人が仲良くなるのに、そう、時間はいらなかった。

「お互い、ヴァルホルになれるといいね!それじゃね、そら!」

教室の前まで来ると、アッシュは手を振りながら、A組へと走り去っていった。

「…ヴァルホル?」

アッシュに言われた意味が良くわからない、と思いながら、教室に入る。すると、生徒と先生全員が、そらの方を見てきた。

「おかえり。君が最後ですよ。さ、席について」

先生に言われて、慌てて席に着いた。


よく考えてみれば、クラスで私だけ、テレポしなかったんだった…


苦笑いを浮かべながら、すみません、と謝り、席に着いた。
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