Magic Academy ~禁書に愛された少女~
一瞬、自分の体が軽くなったように感じる。立っていたはずの床が急になくなる感じに、そらは思わず、抱きしめていた腕に力をさらに込めていた。

「…そら。もう大丈夫だ」

ドルイドに言われて、そらはそっと片目を開けてみる。目の前には、にやにやとした顔の、アッシュとうみの姿があった。

「そらぁ?そんなにドルイドのこと抱きしめちゃって、どぉしたのかしら?」

アッシュに意地悪く言われて、そらは白い目を向けた。

「テレポが使えないから、体がふわっとするような感覚が苦手なの。悪かったわね」

頬を少し膨らませて、そらはぷいっとそっぽを向いた。

「あ、ドルイド、ありがとう!」

深々と頭を下げてお礼をいうそらに、ドルイドは少し照れながら、いや、とだけ答えた。

「しっかし、そらはほんと、実技苦手だよなー」

うみに言われて言葉につまる。

「そらって、魔法は何が使えるの?」

アッシュが興味津々といった表情で、そらの方をみた。そらは不機嫌そうに。ぼそっと呟いた。

「…フライ」

「他には?」

アッシュがさらに聞いてくるので、そらはさらにぶすっとした表情で答えた。

「それだけ!他に使える魔法なんてぜんっぜんないよ!悪い!?」

「えぇ!?まさか…嘘でしょ!?」

アッシュの言葉に、そらはいたたまれなくなり、思わずその場を走って逃げだした。

「ちょ、そら!」

アッシュが呼び止めるが、そらは振り返らずに、そのまま寮を背中に、走り去っていった。

「おい、アッシュ!そらのやつ、魔法がほとんど使えないこと、気にしてるってことくらい知ってるだろ?」

うみに言われて、アッシュは俯いた。

「だって…まさかそこまで使えないとは思わなかったから」

アッシュの言葉に、ドルイドがため息をついて聞いてきた。

「で、どうするんだ?」

少しの沈黙が、3人を包む。
アッシュは決心したように、顔をばっとあげる。

「私、そらに謝る!」

そう言うと、アッシュもその場を去っていった。
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