Magic Academy ~禁書に愛された少女~
気がつくと、学校の中庭まで走ってきていた。

「そら、どうした?らしくもない」

シークに言われて、そらは何も言わず、ただその場に座り込んだ。

「お前が魔法を使えないことは、今に始まったことじゃないだろう?」

慰めようとしてくれている。と、思いたい。
が、シークの言葉は、そんなふうには聞こえなかった。

「そうだよ?どうせ私は魔法の使えない魔法使いだもん」


あ、やばい。


口を開くと、涙があふれそうになる。そう思って、そらはぐっと唇をかみ、口を閉ざした。

が。

目に涙がたまっていくのがわかった。

「お前が今まで、そんな風に卑屈になったところ、見たことがないぞ」

呆れたようなシークの言葉に、大きな一粒の涙がぼろっと落ちた。

「…あた…し…」

口を開くと、ダムが決壊したかのように、次々と涙があふれ出てきた。

「好きで…使え…な…わけじゃ…」

涙でうまく喋れない。


私だって、魔法が使えるようになりたいよ。


そのとき、自分の周りに、ふわっと優しい、まるで星のように輝く光りの粒が現れた。

「これ…」

そらは驚いて目を見開いた。

「ごめん」

「シーク…」

シークが小さく呟いた。そらは、躊躇いがちにシークの名前を呼んだ。

「泣かせるつもりなんてなかったんだ。俺はただ、いつもの、前向きで明るいお前を思い出してもらいたかったんだ」
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