Magic Academy ~禁書に愛された少女~
『そら』

力強く、名前を呼ぶ声がした。聞き覚えのある声。
その声に、そらははっとする。

瞬間、風が止み、そらの体は、カクンと落ち込んだ。

「うわあぁ!!」

急に落下し始めた自分に驚き、一瞬、自分で唯一使える魔法があることを、そしてその魔法が浮遊魔法であることも忘れ、ひゅるひゅると落下していった。

(あぁ…海にぶつかる…)

そう思った瞬間、海面スレスレのところで、体がピタリと止まった。どんどんひらいていく星たちとの距離も、それ以上は離れることはなくなった。

耳元で、水がちゃぷちゃぷと音をたてている。心地のよいその音に、そらはまた、めを閉じ、じっと聞き入った。

「そんなところで、何をしている?」

ふっと声をかけられ、目をあけた。そこには黒髪に、深紅の眼の少年の姿があった。

「…誰?」


どこかで見た、ような気がする、でもない?


見覚えがあるようなないような、と、首を傾げていると、少年が、そっと手を伸ばしてきた。
ひょいっと体を起こされ、そらはあわててお礼を言った。

「あ、ごめんなさい。自分で起きればいいのにね、ぼーっとしちゃってた。ありがとう」

そらの言葉に、少年は何も答えず、ただ、じっと、そらの方を見ていた。
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