禁じられた遊び
「一番は桃香ちゃんかな…
勇人が奪われちゃうんじゃないか…って不安になっちゃった」

…なんてね

克波に言われた言葉が引き金になった…なんて言えないよ

「桃香…か」

勇人の手が私の身体から離れていく

え?

なんで……桃香ちゃんの名前を呟きながら、私から離れていくの?

「あいつを初めてみたとき、小花とかぶったんだ
全然、似てないのに……放っておけなかった
関わればかかわるほど、トロいし、馬鹿がつくほどお人よしだし、苛々した」

勇人が起き上がって、シャツに袖を通した

私に背を向けて、話す勇人は今、どんな表情をしているのだろう

ねえ、こっちを向いて話しをしてよ

不安になるじゃない

「義兄に酷いことされてるってわかってるのに、あんな家に帰りやがって
今夜だってどうなるか……理解できない頭じゃないのに
どうしてあんな家に帰りたがるのか…俺には納得いかねえよ」

「桃香ちゃんなりの理由があるんじゃないの?」

桃香ちゃんの話になると、感情的になるんだね

苛々して、膝の上にある拳に力が入ってるよ

クールでいつでも落ち着いている勇人とは別人みたい

「ねえ、しばらくここにいてもいい?
…ていうか、ずっと居たいんだけど、帰る場所、無くなっちゃったから」

「ああ、いいよ」

「ありがとう
じゃ、今日から二人暮らしね」

私は背中から、勇人に抱きついた

心の中が、ぐちゃぐちゃしている

九条家にはもう戻らない

勇人に守ってもらうって決めたのに、勇人の気持ちはもう私にないみたいで…

なんだろう

モヤモヤしているよ
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