禁じられた遊び

桃香Side③

勇人さんが案内してくれた部屋は、本当に何もなかった

生活に必要最低限の物品はあるみたいだけど…

引っ越し前夜の家…って感じがする

勇人さんの部屋より、5階下の部屋だった

3LDKで、勇人さんの部屋より小ぢんまりしている

「すぐに生活できるようにしておけって言ったのに
これでどう生きていけって言うんだよ」

部屋にあがるなり、勇人さんが文句を吐き出した

「寝る場所さえ確保できていれば、生活できるかと…思います」

私は寝室にしたと…思われる部屋を眺めながら呟いた

なんで、ダブルベッド?

どういうつもりでこの部屋を用意したのかな?

もしかして小花さんと生活するための新居?

う~ん、それとも小花さんの一人暮らし用の部屋?

よくわからないけれど……

すぐに生活はできるけれど、さっぱりしすぎててちょっと寂しいかな?

「これならテツの家に行ったほうが良かったんじゃねえか
ま、俺はパソコンがあればいいけど」

何もない居間の片隅に、ノート型のパソコンをネットにつながれた状態で置いてあった

「パソコンですか?」

「ああ、九条の対策を早急にしないと、いけないからな」

「対策…ですか?」

「ああ
桃香は適当に過ごせ
ライフラインは整っているはずだから、勝手に使え
眠くなったら、ベッドで寝るといい
俺は…たぶん、寝ない」

寝ない…って

寝ずに何をするの?

克波君の父親が、小花さんたちに手を出さないようにするために何を手を打つのかな?

「何か、手伝えることは?」

「ねえよ」

「でも…何か」

「今まで、俺は一人でやってきた
あんたに後ろでウロチョロされていると、気が散って集中できねえんだよ」

…そうだよね

「あ、でも一人で外に出るな
九条が何をするかわからねえからな」

勇人さんがパソコンの前にどかっと座ると、電源を入れた

「わかりました」

あたしは大きな鞄を抱えたまま、ベッドが置いてある部屋に向かった
< 167 / 200 >

この作品をシェア

pagetop