禁じられた遊び
寝室の明かりをつけると、ベッドの上に尻を落とした

居間で、勇人さんが頑張っているってわかっているのに、私一人でゆっくり眠れないよ

だからって何も手伝えないし

勇人さんって、凄い人なんだなって感じる

最初に会った時も、威圧感みたいなのがあったけど

今も、すごく大きくて壁にみたい

守ろうと決めた相手には、何が何でも『守り』の姿勢を崩さないんだもん

2歳しか年の差がないのに、どうしてあんなにしっかりしているんだろう

私も一人で、がんばれる人になりたいな

ママにばっかり甘えているのは悪いよ

ママがいなくても、頑張って生きていける人にならなくちゃ…って言っても何から始めたらいいのかわからないや

あたしは、化粧ポーチを出すと、二つに分けている髪をほどいた

癖の強い栗色の髪が、ふわりと肩の上に乗っかった

櫛と鏡を出すと、髪を梳かした

前髪のピンを外す

斜めに流してある髪の隙間から、古傷が顔を出す

『お前さえいなければ』

傷を目にするたびに、パパの言葉が蘇る

『今まで、俺は一人でやってきた
あんたに後ろでウロチョロされていると、気が散って集中できねえんだよ』

邪魔…だとは言わないんだね

だって

テツさんにあたしを預けて、一人でこの部屋で調べ事をすることだってできたのに

なのにあたしを邪魔扱いしないで、部屋に入れて好きなようにしていいって言ってくれた

それが嬉しい

何もできない事実が苦しいけど

ここに居て良いって思えるのが嬉しいよ

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