禁じられた遊び
「小山内君」

九条家の門を出ると、一台の車が停車した

「なんだ、これから報告しようと思ったのに」

俺は運転席にいる男性に微笑んだ

「自白したのか?」

「いいえ
たぶん、殺人の証拠を消しに行くんじゃないですか?
誰かに頼む時間はないだろうから」

俺は後部座席に乗り込んだ

運転席にいる男性が、煙草を吸い始めた

「動くと思うか?」

「動くでしょう
かなり動揺してましたよ
証人となる人間たちが、九条克海を裏切ったと彼は信じてたみたいですし
誰も裏切ってないのに」

そう
証拠なんてどこにもない

まあ横領とか
詐欺の証拠なら、昨日ネットで集めたから、それで逮捕してもらおうと思えばできる

…が
小花の父を殺した罪を、問われないで一生を終えられては困る

克波の母を殺した罪を、問われないで一生を終えられては困るんだよ

小花も克波も、苦しんできたんだ

その報いは受けるべきだろ?

「なあ、藤城さん
絶対に殺人犯で逮捕してくれよ」

「君に言われなくても、逮捕するよ
私は殺人を犯しても、のうのうと生きている人間が大嫌いなんだ」

「ありがとう」

「小山内君はもう学校に戻りなさい
捕まえたら、君に知らせるから」

「ああ、そうするよ」

俺は車から降りると、九条家に背を向けて歩き出した
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