禁じられた遊び
私は歩道を歩きながら、学生鞄の中に大事な通帳をしまった

この通帳は大事な宝物だ

九条家から逃げ出すための資金

絶対に逃げ切ってみせるんだ

私の歩く横で、黒塗りのリムジンが静かに停車した

え?

私はリムジンから見える運転手を見た

見覚えのある男だ

助手席から黒のスーツを着て、黒のサングラスをかけている恰幅の良い男がすっと降りると、私の行く手を阻んだ

「小花、社長が呼んでいる」

え?

私は後部座席に視線をうつした

黒いの窓で、中が見えない

母が他界してから1ヵ月が過ぎようとしている

母の命を終りを知るなり、すぐに海外に飛び、日本から姿を消した

そして母の死を知っても、日本には戻らず、葬儀費用だと大金を執事に送るだけで何の音沙汰もなかった

今日、日本に帰ってきたのだろうか?

最低な男

愛人の最期も看取れないなんて

「小花、乗りなさい」

後部座席の窓が開くと、克海が顔を出してきた

35歳とは思えない若々しい笑顔を私に向ける

ウソくさい笑顔

艶のある黒髪をオールバックにして、固めている

私は向きを変えると、リムジンに近づいた

「おかえりなさいませ、克海様」

私は頭を下げた

「挨拶はいいから、ほら、早く乗りなさい

おい! 何をしている
さっさとドアを開けないか」

ボディガードの男に向かって、克海が怒鳴る

黒のスーツを着ている男が慌てて、ドアを開けた

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