禁じられた遊び
「勇人はこう見えても、それなりに権力があるから
今日みたいな男から、守ってもらうといいわ」

貴美恵さんは力強い目で、うなづいた

「だから、彼氏としてしっかりやるのよ、勇人!」

「くだらねえんだよ」

勇人さんはぷいっと視線をそらしてしまった

どう見ても、納得しているようには見えませんよ!

貴美恵さんの考えに、反抗しているように感じますけど

……ってもしかして、勇人さんは貴美恵を慕ってるんじゃないの?

そうだよ

貴美恵さんは婚約者として嫌がっているかもしれない

でも勇人さんは、貴美恵さんが婚約者であってほしいって思っているんじゃないかな?

だから貴美恵さんの言うことに逆らわない

んで、今の提案には反抗の意思を表しているんだよ

「あの……やっぱり私は……」

「駄目よ! あんな馬鹿ばっかりの学校で、桃ちゃんが犠牲になることはないの!
使える男は適当に使うのよ
あ、今使える男ってのが、勇人よ
桃ちゃんの危機から守れるのは、性格はダメ野郎だけど権力と金でなら誰にも負けない勇人が一番適しているわ」

貴美恵さん…って凄い人だなぁ

勇人さんを目の前にして、ポンポンと言葉が出ちゃうんだから

勇人さんが生徒手帳を手に持って立ち上がると、あたしの顔面にめがけて投げてきた

中途半端に開いた手帳は、あたしの鼻先にあたると腿の上に落ちた

「ちょっと!
もっと優しく接しなさい」

「うるせえんだよ
テツ、さっさと車で送っていけ」

「はいはい」

部屋の隅でずっとにこにこと微笑んで、傍観していた男性が車のキーをひとさし指でくるくるとまわし始めた

「桃香様、家まできちんとお送りします
もう遅い時間ですから
ご家族も心配していると思いますよ
だから勇人様が、直接、桃香様のご両親に説明してくださります」


< 38 / 200 >

この作品をシェア

pagetop