禁じられた遊び
勇人さんは「ふん」と鼻を鳴らすと、3歩ほど前に出て門の前に立った

何の躊躇もせずに、家の呼び鈴を鳴らした

え?
ちょ……本当に勇人さんが説明をするの?

「あのっ!
あたし、平気ですから
一人で説明しますので……」

勇人さんの広い背中に向かって口を開く

「あ?」

勇人さんが、ぎろりと眼球を動かしてあたしの顔を見た

「えっと……ここまで、送っていただいたことは感謝してます…」

『はい? どちら様ですか』

ママの声が、インターフォンから聞こえてきた

「桃香様、勇人様に任せれば平気ですから」

テツさんが、あたしの腕を掴んで微笑んでくれた

どうして?

貴美恵さんも、テツさんも……

どうして、勇人さんをそんなに信頼できるのだろう

なぜ、勇人さんなら平気だと自信がもてるのだろう


「紫桜学院高等部3年の小山内 勇人(おさない はやと)です
桃香さんのことで、少しお話しておきたいのですが、よろしいでしょうか?」

『え? 桃香が何かしたんですか?』

ママが驚いた声を出した

…だよね
そう思うよね

転校初日に、3年の男子が『話がある』なんてきたらびっくりするって

つい数日前まで、庶民だったんだよ…私とママは

そんな二人にとって、この世界はまるでおとぎ話みたいで…現実味がないよ

おとぎ話みないに、夢や希望には満ちてないけどね

「いえ、お願いがあって来たのです
桃香さんに直接お願いしたのですが…ご家族の意見を気におられましたので、僕が直接、ご家族の意見を聞きに来ました」

勇人さんって二重人格だ

さっきまでの俺様オーラが消えてるもん

お坊ちゃまになってる

清楚な青年になりきってる

どこから見ても…『くだらねえ』とか言わなそうだよ

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