禁じられた遊び
「じゃ、そういうことだから
桃香、明日また迎えに来る」

え?

あたしはぽかんと口を開けたまま、立ち上がった勇人さんを見上げた

「ほら、立つんだよ」

勇人さんに合わせて慌てて立ち上がった良太郎が、あたしの背中を蹴った

「西岡!」

「は、はい。すみません…つい、義妹が立たないから」

両手を太ももにつけて、ぴんと良太郎が背筋を伸ばした

立たなくちゃいけなかったんだ……あたし

あちこちが痛む身体に鞭を入れて、あたしは立ち上がった

「あら、お茶でも……」

おぼんにお茶をのせて、部屋に入ってきたママが、呑気な声を出した

「遅いじゃないか!」

お義父さんが、低い声で怒った

「あ、ごめんなさい」

ママが不思議そうな顔で、謝った

…だよね
わからなくてあたりまえだよ

あたしもママも、庶民育ちだもん

小山内勇人がどれくらい凄い人なのか、知らないよ

ママを怒るのは間違っているよ

あたしは無意識のうちに、頬を膨らましてお義父さんを見つめていた

あたしの膨らんだ頬を、勇人さんが軽く抓った

え?

あたしが勇人さんと見上げると、フッと笑った

は?

笑った?

勇人さんが笑ったの?

「御構い無く。もう用事はすみましたので
それに桃香が淹れたお茶のほうが好きですから」

勇人さんがママの横を通り過ぎて、玄関に向かった

「え?
桃香のお茶?」

ママが不思議そうにまた小首をかしげた
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