禁じられた遊び
「桃花ちゃんって、髪がクルクルしてて可愛いね」

全ての痣に湿布を貼り終えたテツさんが褒めてくれた

強い癖っ毛で、どんなにまっすぐに伸ばそうとしてもすぐにクルクルと丸まって、ボリュームが出てしまう

大嫌いな髪だ

でもテツさんに褒めてもらえると、ちょっと嬉しいかも

あたしは布団に包まったまま、首を横に振った

「触ってみてもいい?」

「…はい」

テツさんの手があたしの頭に行く

骨ばった指が、あたしの髪に触れた

「ふわふわしてる
本当に可愛い」

テツさんの言葉に、あたしの頬が熱くなっていく

恥ずかしいよ

「桃香ちゃん、明日、早いから横になるといいよ」

「でも…」

「僕は桃香ちゃんが寝るまでいるよ
安心して眠りなよ
僕がここにいる間は、良太郎様から守るから」

あたしは小さくうなづくと、布団の中に潜った

「テツさん、お願いがあるんです
このことは勇人さんには言わないでください」

横になったテツさんが、あたしの手を握ってくれた

「どうして?」

優しい笑みであたしを見つめてくれる

「これ以上、勇人さんには迷惑をかけたくないんです
貴美恵さんにも悪いし…だから…」

テツさんのぬくもりが、心地よくて横になったあたしに眠気が襲ってきた

「わかったよ
内緒にしておく」

「ありがとう、ございま……す」

「おやすみ、桃香ちゃん」



遠くのほうで、テツさんの温かい言葉が聞こえた
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