禁じられた遊び

「だから餓鬼なんだよ、お前は」

近くにあった書類を手に取った勇人さんは、九条さんの頭を軽く叩いた

「人生に遅いも早いもねえんだよ
行動したときが、自分にとって一番良い時期なんだ
諦めるな
本当に大切なものなら、絶対に諦めるな」

勇人さんがにっこりとほほ笑む

あ…勇人さんも笑うんだ

むすっとした顔と演技している顔しか知らないから

なんか意外だな

笑うと…テツさんと似てるかもしれない

「どうしていいか…わからないんだ
馬鹿オヤジに逆らうなんて」

「怖いのか？」

「ああ、怖い
あいつに逆らったら、実の息子の俺だって殺される」

一体…この人たちは、何の話をしているの？

あたしには意味が……

九条さんの目があたしに向いた

「こいつ……平気なのか？」

「ああ、信用できる」

「勇人さんの口から『信用』って言葉、似合わねえな」

九条さんが笑顔になった

「うるせえよ、一年坊主が
九条、さっさと片付けろ
小花にばれるぞ」

「小花はたぶん、学校に来ねえよ
オヤジの女になったんだ
もう外に出してもらえねえ
籠の中の鳥と同じだよ」

九条さんが悲しそうに微笑んだ

寂しそうな眼だ

きっと小花さんを好きなんだろうな、この人

「いや、小花は来る
だから片付けておけ」

「なんでわかるんだよ」

「ほら、校庭を走ってる」

勇人さんの言葉に、九条さんは窓に近づいた

「マジかよ！
おいっ、一年
さっさと片付けろ！」

九条さんがあたしの目を見て、大きな声を出した

「お前も一年だろうが！」

勇人さんが持っていた書類で、九条さんの頭を叩いた