禁じられた遊び
克波さんが困惑している

どうしよう

涙を止めないと……

「誰かにいじめられてるとか?」

泣いている理由を……

他の理由を言わなくちゃ!

「あたし……ママが再婚したんです
それまでは貧乏一直線って感じの家庭で…ママの給料でぎりぎりの生活を送ってたんです
いろいろあって、何度も引っ越しを繰り返して
仕事場も何度も転職して…それでやっとママが幸せになれたと思ったのに」

「あんたが不幸になったんだ」

「別に不幸じゃないけど…」

「苦しいんだろ
今の生活が
体中、痣だらけにしてさ…我慢する必要、あんのかよ」

「ママが幸せなら」

「自分の人生を無駄にできると?」

「たぶん」

克波さんが鼻で笑った

「偽善だな
俺、そういうの好きじゃねえ
お前だって夢や欲望があんだろ?
それに向かって頑張ろうって気はねえのかよ」

「あたしの夢?」

「ねえのかよ」

「ママの幸せ」

「お前が痣だらけになって苦しい思いをしても、あんたのママは一人だけ幸せになりてーって思う人間なのかよ」

あたしは首を横に振った

「なら、我慢する必要なんてねえだろ?
誰にやられたか知らねえけどさ…」

「お義兄さん
…あたしが気に入らないみたいで」

「確か…西岡って言ってたな
あいつか!
馬鹿良太郎の妹になったのか
お前、家、出たほうがいいぜ…ってママの幸せを優先にするのか」

「うん」

「お前も馬鹿だなぁ」

克波さんは呆れた声でコンクリートの地面にまたごろりと横になった

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