禁じられた遊び
「俺も馬鹿だけどさ」

克波さんが自嘲した笑みを浮かべる

青い空を見上げている克波さんは、すごくさびしそうにしていた

「好きな女の夢をかなえるために、女の体を傷つけてたんだぜ
そいつを抱いてさ、金をあげて……ばっかみてぇ」

「小花さんのこと?」

「ああ
親父に小花を奪われた
俺と親父じゃ、稼いでる金の単位が違いすぎるぜ
小花にあげる金額もきっと全然違うんだ
小花はでかい夢があるから、応援してるんだ
ぜってぇ、その夢をかなえてもらいてぇんだ
俺にはできない夢だから
あいつに託している」

「付き合ってないんですか?
あたし、てっきり小花さんと付き合ってるのかと…」

「付き合ってねえよ
俺と小花の関係にあるのはビジネスだよ」

「でも克波さんは、小花さんが好きなんですよね?」

「ああ、好きだ!
大好きだ
本人に言うつもりはねえけど」

「どうして……」

「言ったら、小花を解放できなくなるから
それだけだ
あいつは俺の家から逃げたい
逃げたくて金を貯めてる
九条家の奴らは馬鹿だから
俺は小花を逃がしてやりたい」

「できますよ」

「問題はオヤジなんだ」

「父親って面倒ですよね」

「え?」

克波さんが驚いた声をあげて、顔を持ち上げた

あたしは笑顔を作ると、首を横に振った

「あたしのパパが面倒くさい人だったので」

「そうか」

克波さんも、小花さんも……それぞれ何かを抱えて生きているんだね

私だけが苦しいんじゃない

誰もが心に闇を抱えて、苦しい毎日に耐えているんだ

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