禁じられた遊び
「…とわりぃ」

「ううん、あたしはママの幸せが一番だから」

「俺も。小花の幸せが一番だ」

「そのためにできることを、自分なりにするしかないんだよ」

「そ…だな」

あたしの背中と、克波さんの背中がそっと触れあった

互いに寄りかかるように、一歩ずつ後ろにさがって背中をぴったりとくっつけた

あたしは床を見る

夕日で、克波さんとあたしの影が溶け合って、そして階下に向かって伸びていた

「克波さんは小花さんのために、何をするんですか?」

「聞くのか?」

「聞いておいたほうが、途中で投げ出さないでしょ?
こいつに知られてるから、負けられねえって思わない?」

「まあ…そうだな
とりあえずは、オヤジから守るって宣言したいけど…小花はオヤジと契約しちゃってるから」

「なら、克波さんがさらに好条件にして小花さんを呼び戻せばいいんじゃないですか?」

「俺にそれだけの大金を動かせる権力はねえよ」

「じゃ、諦めるんですか?」

「……わーったよ。どうにかする
学校、サボることが多くなるけど……生徒会の仕事、お前がどうにかしろよ」

「いいですよ
『恋人ごっこ』より、そっちのほうがいいです」

「言ってくれるじゃん」

克波さんの腕が動くと、あたしの脇腹に肘が入った

「んで、桃香は? ママのために何をするんだ?」

「んー、我慢…かな」

「は? 良太郎の言いなりになるのかよ!」

「だってあたしが逃げたら、ママの幸せが無くなっちゃうでしょ?
あの家にいる限り、ママは守られるから」

「守られる?」

あたしは小さく頷いた

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