おいしい紅茶を飲む前に
闇は忍び寄る。足音はない。
ウォーキングツアーは日が暮れてからも続いていた。
たくさんの人の顔を短時間に頭に押し込むのは、なかなかご苦労なことだ。
誰よりも正確にシェリルの能力を把握しているはずのフレディがそれを続けているところをみると、できるはずのことではあるらしい。
一応は努力などをするものの、すでにシェリルは似たような町並みにだけでも翻弄されていた。
なんて細かく区切られた街。クレタ島もびっくりだ。
今日わかったことと言えば、お兄ちゃんの顔がとても広いということ。
相変わらず、年上の人間に男女を問わず人気が高いらしい。礼儀に適った行動を取れるというのは、一流の処世術なのだろう。
どこの国においても。